ある学童野球審判のつぶやき

まだあまりキャリアのない学童野球審判の日記のようなもの。審判をしていての失敗談や、珍しいプレイにであった際に忘れないように記録しておく場所です。

フォースアウトとアピールアウト

今週は担当の試合が悪天候で中止になってしまい審判の出番がありませんでした。
なので、先日の飲み会で聞こえてきたある指導者の話の中にあった誤解について書きたいと思います。
細かい話の流れは忘れましたが、フライを打ち上げた際の走者の飛び出しに対するアピールアウトフォースアウトと言っておりました。
おそらく多くの人がそのように誤解しているものと思います。かつての自分もそうでした。
原因は走者へのタッグ(タッチ)が必要かどうかで区別するように覚えていたのだと思います。

では、解説してみます。

まず、フォースアウトの定義について。
フォースとは、進塁義務がある状態を指しています。
例えば、自分が1塁走者の場合、打者がゴロなどを打ち、走者となったときに1塁の占有権を失い、2塁へ進塁する義務が生まれます。同様に1−2塁、満塁時の走者も同様に進塁義務が発生します。この状態を「フォースの状態」と言います。
次の塁に到達するか、自分より後位の走者がアウトになるまで続きます。
フォースの状態におかれた走者がアウトになることをフォースアウトと呼びます。

さて、フライを打ち上げた際の走者の飛び出しはどうでしょう?
フライを打ち上げた場合、2アウト時を除いてはリタッチの義務が発生します。野手がボールに触れるまでは進塁が出来ない状態です。
タッグアップ(俗に言うタッチアップ)の離塁が早かった場合も同様ですが、この走者をアウトにするためには、占有塁でのアピールが必要です。(または該当の走者への触球でも良い)これをアピールプレイと言います。

ではフォースアウトとアピールアウトでは何が違うのか?

第3アウトとホームインが競争状態となるいわゆる「タイムプレイ」に関係してきます。
第3アウトがフォースアウトの場合は得点が認められません。
しかし、アピールアウトはタイムプレイとなる場合(※)があります。
ピールアウトよりも前にホームインすれば得点が認められるのです。
得点に関係するだけに、この違いは大きいです。
※アピールアウトでも得点が認められないケースが存在します。例えば、打者走者が1塁を空過した(踏み忘れた)場合のアピールアウトフォースアウトですので、タイムプレイの対象とはなりません。

では、野球規則の確認です。

まずアピールアウトについて。

公認野球規則 7.10 アピールアウト
次の場合アピールすれば走者はアウトになる。
7.10(a) リタッチ
飛球が捕らえられた後、走者が再度の触塁(リタッチ)を果たす前に、身体あるいはその塁にタッチされた場合。

次にフォースアウト

公認野球規則 7.08(e) フォースアウト
打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁にタッチした場合。(このアウトはフォースアウトである)
ただし、後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり、前位の走者には進塁の義務がなくなるから、身体に触球されなければアウトにはならない。
また、走者が塁に触れた後、余勢でオーバースライドまたはオーバーランした場合には、塁に触れた瞬間に進塁の義務を果たしたことになるから、その走者は身体にタッグされなければアウトにはならない。(このアウトはフォースアウトではなく、タッグアウトである)
しかし、進塁の義務を生じた走者が次塁に触れた後、どのような理由にせよ、その塁を捨ててもとの塁の方へ離れた場合は、再びフォースの状態におかれるから、野手にその身体または進塁すべき塁にタッチされれば、その走者はアウトになる。(このアウトはフォースアウトである)

最後にタイムプレイに関しては得点のところに記載があります。

公認野球規則 4.09(a) 得点
3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に1塁、2塁、3塁、本塁に進み、かつ、これに触れた場合には、その都度、1点が記録される。
【付記】 記録されない得点
第3アウトが次のような場合には、そのアウトに至るプレイ中に、走者(1・2にあたる場合は全走者、3に当たる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。
(1)打者走者が1塁に触れる前にアウトにされたとき。(6.05、6.06参照)
(2)走者がフォースアウトにされたとき。(7.08e参照)
(3)前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。(7.10aリタッチ違反、7.10b塁の空過、7.12触塁失敗の影響参照)

また次回。ではでは。

野球規則を正しく理解するための野球審判員マニュアル―規則適用上の解釈について

野球規則を正しく理解するための野球審判員マニュアル―規則適用上の解釈について